Van Dillen & Derks 2012: 認知負荷がかかることで,脅威刺激が検出されにくくなる

Van Dillen, L. F., & Derks, B. (2012). Working memory load reduces facilitated processing of threatening faces: An ERP study. Emotion, 12(6), 1340-1349.

脅威刺激 (e.g., 怒り表情) は検出されやすいことが示されているけれども,
認知負荷をかけることで,そうした脅威刺激の処理に割かれる資源を枯渇させられるので,このバイアスは緩和されるのではないか?,という仮説を検討している。

◆方法
・参加者:15人
・実験計画:2 (認知負荷:高,低) × 2 (表情:喜び,怒り)
・手続き
(1) 課題通知,1秒
(2) 1桁 OR 7桁の数字が提示される,4秒
(3) 性別判断課題:提示表情画像の性別を判断,表情は1秒提示
(4) 提示された数字が (2) の数字と一致しているかを判断,4秒

◆結果
・行動指標:性別判断課題のRT:<低負荷> 怒り > 喜び,<高負荷> 怒り ≒ 喜び
・ERP
:N2:<低負荷> 怒り < 喜び,<高負荷> 怒り ≒ 喜び (Tab1)
:LPP:<低負荷> 怒り > 喜び,<高負荷> 怒り ≒ 喜び (Tab2)

◆考察
N2が注意コントロール,LPPが注意維持に関与していることを踏まえると,
課題負荷 (認知負荷) がかかることで,(性別判断) 課題とは関連のないdistractorとしての脅威刺激 (i.e., 怒り表情) は,検出されにくくなる (あるいは,喜びと同程度の検出になる)。
簡単にいえば,脅威刺激に対する注意のバイアスが,認知負荷が大きくなることによって消失する。